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何度か問題にしている、米国下院の従軍慰安婦非難決議は安倍訪米にぶつけるのはメンツを潰してかわいそうだから、安倍訪米のあとにしてやるという「ご配慮」をいただけることになった(時事通信の記事)。なんだか喜んでいいのかどうかよくわからない話だが、「毒入り米国産牛肉を狂牛メタボになるまで臣民に食べさせます」などという日本側の働きの結果得られた「御配慮」でないことを祈りたい。
◆ 逆に傷口を拡げていく愚かな行為 しかし問題は解決しない。米下院の決議は従軍慰安婦が二十世紀最大の人身売買、というものであり、その上、現在の日本政府がこの問題を隠蔽しようとしていることについても厳しく非難するものだ。 以前これについてよそでコメントしたところ、「原爆を落としたアメリカに言われる筋合いはない」というご意見もいただいた。確かにアメリカの中高生は「世界で一番すぐれた国だから原爆を最初に完成させ、使用することによって残虐な戦争を終わらせた」と教えられているという留学生の話もあった。まあアメリカに言われたくない気持ちそのものは共有する。しかし、誰が非難したか、よりも問題は従軍慰安婦の歴史的事実を認めない愚かな政治家たち、そのせいで被害者への十分な補償もできず、同時にそのことが日本と日本人に不利益を与え続けていることである。アメリカの悪口を言えば被害者が救われるならいくらいってもかまわないが。 どうしてこんなに最悪のシナリオをたどりながらも、日本の政治家はこれらの事実を認めないのだろうか。こんな幼稚な議論にだまされるのは相当いかれた人だけであり、もちろん諸外国に通用するようなものではない。かえって問題が大きくなっていく。 ◆ リーダーシップの無謬性 政治学の入門書などで出てくるリーダーシップ論では、伝統的、投機的、合法的リーダーシップというのが紹介されたりする。 伝統的リーダーシップとは、万世一系の王がこの国を統治するとか、そういう非合理的な神話を振りまくことであり、 合法的リーダーシップとは、法律の手続に従ってやっているという「みかけ」を利用して正統性を確保する。 投機的リーダーシップは、超人的なリーダーが次々奇跡を起こし、構成員を従わせるというものだ。 一般的に間違いが許されないのは、投機的リーダーシップで、超人が奇跡を起こし損ねればメンバーの洗脳が解けてしまうから、無謬でなければならないことになっている。 しかし、よく考えると、いずれのリーダーシップでも構成員の服従を引き出すためには、誤りは多かれ少なかれ許されない。 その意味で考えると、投機的リーダーシップでは、奇跡を起こしたかどうかの結果の無謬性、合法的リーダーシップでは、法に従ったかどうかの手続の無謬性、伝統的リーダーシップでは、王家や国体の成り立ちに正統性があるかの、神話の無謬性である。 ◆ 自民党のリーダーシップ ジミン党は、合法的リーダーシップの部分もあるが、それだけでは権力者の自由が相対的に小さくなるので、おいしくない。子供にも政治家をやらせたいと思えるほどの権力者の自由は、他のリーダーシップも十分に利用しなければならない。 戦前は、伝統的リーダーシップと投機的リーダーシップを合わせたようなものだったが、神風が吹かなかったので、結果の無謬性は崩れ、投機的リーダーシップの比重は相対的に下がった。 しかし、国体の、王家の神話そのものは美しく、無謬でなければならない。個々の兵士の行きすぎはあっても天皇の指揮する皇軍そのものは美しく気高くなければならない。 今さらそんな神話を、と思うのが普通だが、意外にどこの国でも多かれ少なかれ神話めいたものを振り回す。特に神話を構成するシンボルである旗や歌を振り回したがる政治家の国では、こういう手法が多用される。 そして、考えてみたらいまや日本の政治家の多くは、戦前に非合理的な神話を振りまいておいしい思いをしてきた政治家たちの二世、三世である。国家を危うくするほどの戦争は望まないが、戦時体制が物も権力も女も自由にさせてくれることはよく知っている。 「大きな政府」の代表であるはずのスウェーデンでは、国会議員はたいてい別に職を持っていて、仕事の帰りに活動するという。なぜなら国会議員の給料では食えないからだ。苦労を買って出ているようなものである。誰も子供に政治家を「継がせよう」などとは思わないだろう。 一方日本の政治家は甘くておいしい。このエサを逃さないためには、王家と神話の誤謬は自分たちの存在を揺るがすものとして排斥されなければならない。従軍慰安婦は神国の高潔性を著しく害し、いくところまでいけば明治維新の、そして戦後の体制そのものの不信へとつながる。だから従軍慰安婦なども認めるわけにいかない。 おそらくこの態度を続けていくと世界的な非難がもっと高まるだろう。学力低下の青少年をマンガでだましてきて、それが崩れたときの混乱を考えると、いまからでも遅くない、認めるべきものは認め、まじめに子供に歴史を教える国にした上で、我々が真実の上に立って取り戻すべきプライドは何なのかを考え直した方がよいのではないだろうか。そんな歴史があっても十分誇りをもてる国になれることはドイツの人たちを見ていてもわかるのだから。 ※ ここでいう従軍慰安婦とは、一般的な売春ではなく、戦時中日本の軍隊が関与した、組織的、強制的なものを言います。 ところで、またいつも通りのタイプの人たちが、必死でコメントを書いてきますが、もうすでに終わった話についてここに書いてもしょうがないので、いくつか慰安婦についてのページを掲げておきます。 慰安婦問題FAQ ちょっと都知事問題や国民投票問題が大事になってきたので、まあコメント書いてもいいんですが、壊れたテープレコーダーみたいな人はちょっと考え直して欲しいところです。
by luxemburg
| 2007-03-06 22:51
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