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by luxemburg
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九条の会



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護憲と改憲
 あまりこういう抽象的な話はしたくないけど、基本的なところなので、ちょっと考えておきたい。
 世の中には「改憲派」と「護憲派」がいることになっているらしく、さらにその「改憲派」は護憲派のことを「憲法を守ろうとしている」と考えているらしい。



 改憲派から見た護憲派のイメージは、おそらく次のようなものだろう。憲法は今から60年前にできたものであり、すでに時代に合わなくなっているのに、その憲法を墨守しようとしている。戦後すぐにアメリカによって日本が悪であるとレッテルを貼られてその時の洗脳がまだ残って自虐主義に陥っている。だから護憲派は時代遅れであり、改革に対する抵抗勢力である、と。

 ところが実際には、いわゆる「護憲派」の人たちの方がアメリカの戦略に批判的であり、原爆などに対しても非難する人が多く、「改憲派」の人の方がアメリカの戦略にそった考え方をしており、アメリカによる洗脳を当てはめるとすれば、むしろふさわしいのは「改憲派」の方である。

 次に、「60年前にできた」ものというのは事実だが、時代遅れ、についてはどうか。
 改憲派からどの部分が時代遅れか、という話は出たことがない。新しい歴史教科書などには「世界最古の憲法」と書かれているそうだが、世界最古の王室が続いていることを自慢にしたいらしい教科書なのにどうして世界で最初に素晴らしい理想を述べた憲法であると自慢しないのかは不思議だ。論理にならない論理として出てくるのは、テロの時代にあって、日本国憲法は時代にそぐわない、というのだが、テロに対抗するとすれば軍事力ではなく、犯罪として捜査することだろうから、軍備をなくそうとするのはむしろ時代に合っていることになる。冷戦が終結した現代に、冷戦時代のような考え方をするほうがよほど時代遅れであるように思われる。

 で、次だが、今日述べたい最大のポイントは、護憲派が憲法を守ろうとしている、というところにどうも誤解があるような気がする、ということである。
 「憲法」にはいろんな意味があるが、「事実状態としての憲法」と「規範的意味としての憲法」がある。
 「事実状態としての憲法」は、その国で通用している国家統治のルールのことで、「固有の意味の憲法」と言うこともあり、この意味における憲法を持たない国家はない。たとえば、純粋な絶対王制にあっては、国王の気分が「事実状態としての憲法」である。
 もちろん日本にも事実状態としての憲法はある。それは、規範的意味としての日本国憲法とはかけ離れた現実である。たとえば日本国憲法は規範的意味としては軍隊を持たないことになっているが、日本の首相はすでに「日本軍」と呼んでおり、事実状態としての憲法は日本国憲法とは全く別の現実となっている。

護憲と改憲_e0068030_22331488.jpg 護憲派は「憲法を守ろう」とか「憲法を変えさせない」と思っているのではなく、日本における現状、すなわち事実状態としての日本を日本国憲法の理想に近づけようとしているのである。つまり、右の図に見られるように、大日本帝国憲法から日本国憲法へ向かう途上にある日本の現実を、より理想に近づけようとしているのである。その理想とは何か、それは(近代)立憲主義の目指す理想である。その方向性があるから、右の図では日本国憲法を上に置き、それへの進歩という意味で矢印を上に向けている。
 近代立憲主義とは、基本的人権を尊重するために権力に縛りをかけるということである。
 護憲派から見ると「改憲派」は、近代立憲主義に逆行する、進歩を止めた、外見的立憲主義ということになる。

 護憲と改憲_e0068030_22333634.jpg「改憲派」に見えるイメージは次のようなものだろう。護憲派は現状を維持しようと思考停止している。それに対し自分たちは新しい時代にふさわしい憲法を求める、そう考えているのだろう。 彼らには、規範的意味とか事実状態としての憲法と言う区別はなく、日本国憲法の現状は、この国家にふさわしくなく、この憲法があるために、国が誇りを持つことができない、と考えている、というか考えさせられている。
 では、その方向性は何なのか?というと、そこで判断が停止してしまう。基本的に憲法を考える視座をかいているように思われる。「品格ある国家」とでもいいたいのかもしれないが、いったいそれが何なのか、おそらく彼らにもわからない。改憲派を操る人たちだけが知っているからだ。

 だから、私は改憲派を操る人以外に「改憲派」はいないと思っている。それは70年前のドイツにユダヤ人で「ナチス賛成派」がいないのと同じだ。

 憲法関係はあまり知らないので、伊藤塾さんの資料、およびワットインターネット司法試験予備校さんの資料、その中で定評があるらしい著作、芦部先生の「憲法」(岩波書店)、佐藤幸治先生の「憲法」(有斐閣)、有斐閣「憲法」(野中他共著)、樋口陽一「比較憲法」などを読んで勉強中です。だんだんに理論的にレベルアップしていくつもりです、お楽しみに。
by luxemburg | 2006-04-02 22:37
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