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先日からスケート選手が日の丸をまとって滑った映像をNHKが故意に放映しなかった(事実ではないらしい)、などとオリンピックを国威発揚の場と考えたがる人が目立ち、さらに文部科学大臣までが(というよりこういう人たちが日本人の平均よりはるかに低い集団であることに気がつけば、「までが」ではないのだろうが)「ロシアの選手が転んで喜びました」と発言する中で、どうして純粋に競技や演技を楽しむことができないのか、と残念に思っている。
オリンピックというのはまあずいぶん汚れた世界らしいので、もともとあきらめるしかないのかもしれないが、最近のワールドベースボールクラシックでも「韓国の選手は、兵役免除がかかっているから、気合が違う」というレベルの話を持ち込む人がいる。あまりあちこちで言われているもので、ちょっとうるさくなってきた。 言っている人は、きちんと考えていっているのだろうか、それとも、マスコミというのは能力のない人がやっているのか。 運動神経が問題になる世界では、最高の能力が発揮される状態というのは、「無」である。別に私自身はオリンピック選手になったこともないし、かすったこともないけれども、自分なりに何もかも忘れて音楽や運動に打ち込んだことくらいはある。試合や演奏会で最高のプレーができたときというのは、実に不思議な集中状態にある。誰にでも多少はそういう経験はあって、また多少の個人差もあるだろうが、私の場合、スポーツだと、疲れから解放され、予定通りの位置に自然に足が動いていつの間にかボールが手になじんでくっついてくるような感じ。音楽の場合だと、演奏しているというより、音楽の中にいて、自分の音がホールの隅々にまでしみこんでいくのがわかる、それでいてボーっとしているのではなく、観客の表情を観察しようと思えば観察できる、そういう状態だ。むしろ一般に言う集中というのとはちょっと違う感じだ。 この人は本物だな、と思ったのは、元F1レーサーの中島悟さんが、時速300キロの世界は、静かに止まっているような感じ、と表現したときだ。つまり、同じく300キロで走るライバルが隣にいて、お互いに抜く・抜かせない、どこで仕掛ける・仕掛けさせないという緊張した空気が二人の間にあり、その空気はとまっている、どうもそういう感じだというのだ。インタビューしていた作家がその感じを明らかに理解できないらしく、「それはまさしく男の世界ですね」と何度も言うと、そのうち中島悟は「いや、男とか女とか言うのとは違うんですけど」とさすがに痺れを切らして言っていた。 ピッチャーからボールが飛んでくるときにもし韓国の打者が「兵役免除、兵役免除」などといっていたら、おそらく全く打てないだろう。私が思うに勝負はそういう世界ではない。兵役免除というにんじんをぶら下げられているんだ、というマスコミの人たちは私には中島悟の話が全く理解できない作家と同じような人に見える。そういう人たちは、人の批評をするばかりで自分は何かに打ち込んだことがないのではないか、と疑ってしまう。 もちろん、貧困な国でサッカー以外に裕福になる方法がないと思って育った子供たちはサッカーがうまくなるだろう。そういうにんじんはありうる、何年も集中して練習し続けるのは、もちろんサッカーがすきという動機が一番だけれども、ハングリーということはありうると思う。しかし、試合の場になって、お金や名誉や利益誘導は、むしろプレーの邪魔になることのほうが多いのではないかと思う。いや、プロ中のプロはそういうプレッシャーを集中力に変えることができるんだ、といえばそうかもしれない。しかし、国の期待という圧力がかかりすぎて本番では芳しくない超一流アスリートはたくさんいる。もっと普通にスポーツそれ自体を楽しむことができないのだろうか、と思う。 日韓戦は、野球そのものの楽しさ、美しさをぜひ見せてもらいたい、それを報道する人たちにも期待したいと思っている。
by luxemburg
| 2006-03-19 11:00
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