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話していて面白いこともあった。とくに、うちに遊びに来たドイツの子に、アルザス=ロレーヌ地方の話を聞いたときだ。
たまたまヨーロッパの地図を出して話していたら、フランスが妙にドイツ側に飛び出している場所を見つけ、これが、アルザス=ロレーヌか、と思い、ドイツ人にその話を聞いた。 その前にちょっとおさらい。 「最後の授業」という話をご存じだろうか。これは南フランスの作家、ドーテという人が書いたもので、プロシャ・フランス戦争(1870年)を題材にしたものと思われるが、アルザス地方の学校で、いつも通りフランス語で授業をしていた先生が涙ながらに、この美しいフランス語でできる授業はこれが最後で、ドイツ軍がそこまで迫っている、ドイツに占領されたら明日からドイツ語の授業にしなければならない、と生徒に話す、という物語である。 で、そういう話をしたときに、領土問題についてのドイツの子供の認識はどうか、と思ったら、「いま、ヨーロッパが一つになろうとしているときだから、どちらの領土というのはあまり問題ではない」のひとことだった。 うわ、こりゃすごいわ。また負けた、という印象だった。なんだか負け続きでイヤになった。聞いたのは一人だけれども、なんだか言ってるこっちが恥ずかしいような気になった。こういう問題になると、日本の若者でとにかく向こうが悪いと絶叫する子もいるようだが、それは知性の低い子だけと安心しておいていいのだろうか。考え過ぎかもしれないが、なんだかヨーロッパの変化を目の当たりにした気がした。 イギリスの子供と映画「ラスト・サムライ」もう一つは、イギリスの子が映画「ラスト・サムライ」を観たときの話だ。彼は、映画の中で明治新政府とアメリカの関係が出てきたのに対し、「映画ではアメリカになっているが、あれはイギリスのやったことだ」といった。 本当に目玉が飛び出るほど驚いた。これは日本人でもどれくらいの人が意識しているだろうか。 我々の明治維新のイメージは、外国の船が迫り、徳川幕府のままではダメだ、近代化できない、と感じた志士たちが、幕府を倒し、日本を近代化させて欧米列強から守った。ところが、その後軍部などの肥大により、本来良かった明治維新がおかしな方向へ向かっていった、といったところだろう。 しかし、たいていの国では「建国の神話」は偽られているものである。たとえば北朝鮮の金日成は別に抗日戦線の英雄でも何でもなく、大国から送り込まれた傀儡にすぎない。 ギリシャ独立の時に行われた「古代ギリシャの復活」などもそうだが、公定の神話を国民に信じさせ、ナショナリズムに利用しようというにすぎない。 日本の場合、明治維新がその神話の一つでである。 逆の側面を書くと、実際には、薩英戦争でイギリスの兵器に驚いた薩摩藩が、イギリスの死の商人の商売にまんまとのせられ、砂糖の密貿易で稼いだ金をつぎ込んで軍備を増強し、長州藩も隠した田で得た金をつぎ込んで同じようなことをするようになった。その二つの藩をつなぐエージェントとして選ばれたのが坂本龍馬である。幕府側にもフランスなどを中心に死の商人が取り入ったが、金銭力の差がものをいい、イギリスの死の商人の傀儡が政権を取った。 これが明治維新の「一面」である。もちろん歴史というのは、いろんな面をもっているから、これが明治維新のすべてということはなく、日本が近代化したことも事実だし、簡単に「良い・悪い」などといえる話ではない。 こういう側面も予備知識としてもって「ラスト・サムライ」をみていただくといくつか気づくことがある。あとは、山本常朝「葉隠」の知識があれば、泣きどころがわかる。 イギリスからの留学生は日本の歴史のこの側面を弱冠16歳にして知っていたということだ。何度もいうが、日本の青少年の歴史認識は本当に貧弱で恥ずかしい。ビスマルクのいうとおり、愚者は自分に学び、賢者は歴史に学ぶ、のだろう。日本の哀れな被洗脳青少年は、自分だけをみて陶酔している。 留学の話は以上。 子供の留学、ホストファミリーをしたことは本当にいい経験になった。苦労もあったけど、結局今もメールのやりとりをしたり、いい付き合いをさせてもらっている。 いま、「古い」ヨーロッパから学ぶことは非常に多いと思う。日本にだってできるはずだと思うが、今の日本で子供たちに想像力の翼を与えてあげられる環境を探すのは難しい、と感じている。 留学が何もかも解決する万能の薬だとは思わないが、ブロガー同盟に参加する意識の人にとっては、お子さんにしてあげられることとして、そして日本を捨てることではなく日本の子供を育てるために、十分選択肢にはいるのではないかと思って書いてみた。
by luxemburg
| 2005-11-23 23:31
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