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by luxemburg
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九条の会



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韓国映画「私の頭の中の消しゴム」
 あまり文学的な素養がないので映画評はろくなことを書けないが、感じたことをつらつらと・・・・

 韓国映画はいつもロマンチックなので、女性と見に行くときに選ぶことが多い。モチーフは大したことがなくても、演出が純朴でストレート、なんだか懐かしい感じがする、というのが人気の秘密らしい。



 「私の頭の中の消しゴム」は、記憶が失われていく若い女性が主人公。
 記憶を失えば自分ではなくなり、愛する男性のことも忘れ、自分すらわからなくなる、その中でどうやって愛を高めていくのか、をテーマにした作品である。
 記憶、というのは韓国ではけっこうキーワードで、記憶喪失などは日本では相当前に少女マンガで流行ったモチーフだが、堂々とフィルムでやるからかえってこちらが気恥ずかしくなるくらい。

 記憶の集合が人格だとしたら、記憶が失われていくことは人格の崩壊を意味する、しかし、こんなに愛した痕跡が本当に何も残らないのだろうか・・・まるでベルグソンと唯物論の論争のようなテーマともいえるが、これを見ながら、私はラマチャンドランが書いた「脳の中の幽霊」を思い出した。
 カプグラ・シンドロームという症状では、母親の記憶がきちんとあるのに、目の前の母親に対して「これは母に似ているが、私の母ではない」と患者が真顔でいうらしい。記憶の中で母に違いないのだが、視覚情報と、母を感じたときに生ずる感情の部分の回路が切れた患者の場合、記憶とは異なる答えを出す。同じ患者が、電話で母の声を聞いたとき、聴覚情報のほうが切れていなければ「お母さんからの電話だ」と思うらしい。
 ということは、かなり無理があるが、何か人間の温かさのような記憶の部分がもし消えなければ、たとえば嗅覚の情報を通じて人間は愛する人の情報を呼び出すこともできるかもしれない、ということになる。ネタバレはよくないので、この映画そのものについてはこれくらいに。

韓国映画の過去と現在
 韓国映画は、女性観、家族観、社会観の変革の時期を感じさせる。とても若々しいエネルギーがある。そのせいか、映画館には若い男女の姿が目立った。あちこちからすすり泣く声が聞こえ、日本と韓国の人たちの底流に流れるものはすごく近いような気がした。

 以前、テレビで1970年ごろの韓国映画の紹介を見たことがあったが、日本の植民地支配に協力する売国奴がさんざん同胞である朝鮮人を痛めつけるが、何かをきっかけに自分も朝鮮人であることを自覚し、最後は同胞とともに悪逆な日本軍に立ち向かい、抱き合って死ぬという壮絶なものが多かったように思う。申し訳ないが、芸術性やリアリティーを感じることはなかった。
 しかし、最近の韓国映画は、同胞、戦争をテーマとしながら、現在を映す鏡として、しっかりと戦争や歴史を見据えている。とくに「ブラザーフッド」、「二重スパイ」などの作品では同じ民族が争う愚かさという警鐘を現代にしっかり打ち鳴らす。「シルミド」も扱うテーマは素晴らしいが、最後を浪花節にした点がちょっと残念。この部分は70年代の韓国映画に戻ってしまったようなところがあって、惜しかった。

日本映画と比べると・・・
 日本でもよく戦争物を扱うが、なんだか昔話のような感じがしてリアリティーがない。
 恋愛ものでも韓国では「ラブストーリー」のようにベトナム戦争を織り込んだものがあり、戦争が現代につながる記憶として語られる。
 一方、日本映画の「ローレライ」などでは、恋愛を扱っているようにも見えるが、そういうリアリティーがやはり感じられない。

 いずれにしても、韓国映画は、90年代後半頃からちょっとバカにできないものになってきて、21世紀になってからは「日本はちょっと抜かれたかなあ」という印象を持つものが多い。

 女優さんは 抜群にかわいらしい。
 「イルマーレ」、「猟奇的な彼女」(チョン・ジヒョン)、「ラブストーリー」(ソン・イェジン)、「ラスト・プレゼント」(イ・ヨンエ)など、目白押し。「ラスト・プレゼント」については、かわいいだけではないので、また今度書こうかな。

私の頭の中の消しゴム(A MOMENT TO REMEMBER)
2004年 韓国
監督:イ・ジェハン
チョン・ウソン、ソン・イェジン


by luxemburg | 2005-11-01 23:05
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