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by luxemburg
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九条の会



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EUの消費税率はマイナスである 
前のエントリーにヨーロッパの消費税はマイナスと書いたことでご質問をいただいているので、消費税についてもう少し書きたい。そしてご質問頂いたのは農業のことだったのでそのことも後半で少し。



◆ 税金の問題は給付とのかねあいで考えないとわからない
 お玉さんのエントリー(お玉さんの記事はいいけど、コメントは揚げ足取りが多く、読む価値は特にない)で税金について延々と議論がなされていて、お玉さんもその不毛さにあきれておられたようだけれども、一番大事なことは給付との関係で税金を考えないと何もいえないということだと思う。
 過去にも書いたとおり、税金が重く見えても、スウェーデンのように低所得者にはそれ以上に戻ってくる場合もある。
 「スウェーデンは給料の7割税金を取られるが、高度なサービスを受けられる」と誤解しているひとは結構多い。しかし、7割なんてとんでもない。一般のサラリーマンにとってスウェーデンの所得税は平均して23%である。社会保障料を合わせても35%ほど(もちろんこれを安いとはいわないが)。
 で、高度なサービスを受けるというのもハズレで、その前にほとんどお金で戻ってくるのだ。制度の善し悪しは別にしてスウェーデンでは3人子供を産めば給付だけでなんとか生活していける、といっている人もいる。つまり高い税金は政府のサービスに支払っているのではなく、ただ金持ちと貧乏人の間で所得の移転を行う、その仲立ちを国がやっているだけなのだ。国が行う警察や消防、教育などのサービスの分を国民の負担というのであれば、むしろスウェーデンは日本より小さな政府である(ただし、教育が完全にタダなど、日本より安い経費でサービス内容は格段に上である。日本人が政府のサービスに対して負担していると思っているカネの多くは「寄生虫のエサ代」である)。

◆ 消費税は逆進税ではないかもしれない
 話を本筋に戻す。で、消費税は逆進税であるというけれども、必ずしもそうではない。所得再配分をきちんとやっている政府のもとでは、消費税が簡単にひどい税金とはいえない。

 たとえば、誰だって必要な基礎的な消費が年間100万円は必要だとしよう。それにかかる消費税は日本の場合5万円である。
所得が500万円の人からすれば、その分すなわち5万円は1%となる。
所得が5000万円の人にすれば、その分は0.1%である。ということは、所得の高い人の方が負担割合の小さい、逆進税ということになるだろう。

 しかし、もし消費税導入の見返りに国民一律に一人5万円の給付が行われていたらどうか。基礎的な消費の分は消費税が無料になる。
 そして残りの消費について考えると、所得500万円の人は、基礎的な消費に100万円使ったあと、残りの400万円を消費すれば、それに対する消費税は20万円、負担はもちろん5%である。
 一方、所得5000万円の人は基礎的な消費以外の4900万円を消費するとすれば、所得税は245万円、これも5%だ。ということは消費税は簡単に比例税に変わる。

 この一律の給付をもし増やしていけば、消費税を実質上累進税にすることも可能となる。
 さらに、その給付が低所得者に有利なようになっており、食料品を中心に非課税だったり、低率だったりすると、いっそう累進はきつくなる。給付との関係をきちんと調整した上で消費税を導入するのであれば、導入は大騒ぎするほど損ではない。
 日本の場合、消費税の導入とほぼ同時期に法人税が少なくなったり、所得税の上限が低くなっていったので、逆進性がもろに表れている。ただ、消費税の導入に「とにかく怒る」というのではなく、バランスを考えた上で、EUと比較してこれこれこうだから消費税の導入はおかしい、という反対をするべきだと思う。逆に導入側はただ単に「EUでは20%くらいが標準だ」などと、取ることだけをいうのは、だましているに等しい。

◆ 食料補助があるだけでかなり違う
 その中で一番低所得者に優しいのは、食料に対して農家への直接補助がなされることである(過去の記事参照。)。
 100円の作物を作った農家に対して50円、現金で補助をしたとする。差引50円で市場に出るかというと、もちろんそうは甘くないだろう。日本では、農家は農業だけではとてもじゃないが生活していけない、と思う人が多くてどんどん数が減っていっている。もともと100円で生きていけなかったのだから、50円もらえるなら80円くらいで出荷し、収入を130円にしようと考えるだろう。なんだ、消費者に還元されないでほとんど農家のポケットにはいるのかというと、それもハズレである。
 農業で食えるとなれば、農家は農業を捨てない、むしろ農業に参入してくる人が増える。そういう過程を通って価格は下がってきて、結局消費者の利益に還元される。
 それだけではない、地方にどんどん人がばらけることになる。これによって、渋滞、通勤ラッシュ、ありとあらゆる国民の福祉が向上し始める。これによって得られる福祉の大きさはpricelessかもしれない。
 もっとすごいのは、攻めにくくなるのだ。大都市に人が集中している国ほどミサイルなどの標的にしやすい国はない。また一カ所を麻痺させたときの混乱の大きさは田園都市国家の比ではない。こんなことを放置しておいて安全保障とか語っている政治家のレベルをきちんと世界は評価しているだろう。その点で評価すると最低限、都市労働者の税金を地方にばらまいていた以前の自民党政治家よりも小泉らのエセ新自由主義者の方がはるかに国家を危険に陥れている。



長くなってきたから食料と安全保障の問題はまた続きを書きます。
 なお、上の比例税のところで収入をすべて消費してしまっていることになっていますが、もちろん平均消費性向の係数をかけるのが正しい議論で本などにもそう書いてあるのはわかっておりますが簡単のため1とおいています。
 もう一つ、このエントリーのタイトルは、消費税率がマイナスと書いていますが、本当にそう思っているのではなく(ホントにマイナスなら財源にならない)、消費税の持つ、あまり一般には考えられていない面にスポットを当てています。

 消費税の他の問題点として、とむ丸さまの「納税か!」(ちょっと略しすぎたかも)と、一応私めのブログで輸出戻し税を論じたものにリンクをはっておきます。
by luxemburg | 2007-03-02 22:28
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