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by luxemburg
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九条の会



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お嬢さま、玲奈と死刑廃止を考える----(1)
 さわやかな秋風が西園寺邸のイングリッシュガーデンを吹き抜ける。ローズの香りを感じながらも、麗子は人々の生活が苦しくなって行くことに心を痛めているのか、テラスで少し悲しげだ。




 
麗子 :ああ、希望の光はこの国にはないのかしら・・・

玲奈 :お久しぶりね、麗子さん

麗子:まぁ、玲奈お姉さま、いつフランスから?

ばあや:玲奈様、それにいちだんとおきれいに。麗子様も玲奈様のことをいつもあこがれのお姉さまと話しておいでです。

玲奈 :ばあやも変わらないわね。
この間フランスのことを気にしてたようだから
、あの歴史的なロベール=バダンテールの演説、訳して持ってきてあげたわ。あとアゴーのブルターニュクッキーもね。イングリッシュティーにぴったりでしょ。

麗子 :まあ、うれしい。で、バダンデールって、あの死刑廃止の演説のことですの?

ばあや:それは貴重でございます。そういえば今日は、あの演説(フランス官報 国民議会審議録1981年9月17日からちょうど25年目の9月17日でございますね。イギリス、アメリカ、フランスと続いた革命や独立の中でも、フランス人権宣言はきわめて重要な位置を占めるのでございますが、地域や時代の特殊性という制約を超えて、人類普遍の原理をうたいあげ、提示したからでございます。死刑を廃止した国々の中でもこのバダンテールの演説は光り輝くものといってよろしいかと思います。

玲奈 :さすがばあや、よく知ってるわね。みんなにこんなばあやが欲しいと言われるだけのことはあるわ。luxemburgさんなんて、誰からも欲しいといってもらえないみたいですけど。

麗子 :あの人、性格悪いんですもの、嫌い。そんな話はいいとしてバダンデールのことは知りたいわ。でもパダンテールってどんな人?

玲奈 :フランスのミッテラン左派政権が1981年に死刑を廃止するときの法務大臣で、弁護士さんなの。1970年代には多くの凶悪犯の弁護を担当し、死刑判決を回避させたことで有名な人よ。中でも、パトリック・アンリという殺人者は絶対死刑を免れないと思われていたのに、バダンテール弁護士の弁護で終身刑の判決になったわ。この被告は当時を知るフランス人には凶悪犯の代名詞だったのよ。そのことは、「そして、死刑は廃止された」(ロベール=バダンデール著:作品社)に書いてありますわ。

ばあや:日本でも良心的な裁判官の中には無罪を訴える被告人の声が今も耳に残るという方がいらっしゃいます。やはり現場を知っている方の言葉というのは重いものでございますね。

麗子 :でも、確か当時の世論はむしろ死刑存置だったんでしょう?

玲奈 :そう、死刑廃止直前の世論調査では廃止賛成は33%だったの。だけど、バダンデールは、死刑廃止の議論を「良心の議論」というのよ。

ばあや:フランスでは議会の地位が高く、その決断は一般意思の現れ、と考えられております。選良たちが理性と良心に従って、決断をすることはフランスでは民主主義の現れ、逆に言えば、それだけ責任と慎重さをもって決断して欲しい、と自覚を訴えているのでございます。ただ単にその時の多数決的な民主主義では決まらない問題であることはいわゆる魔女狩りを見ても明らかでございます。

麗子 :すごいわね、民主主義とノブレスオブリージュ(高貴なる義務)の上にあるのね。世論は間違うことがある、と責任を持っていえるなんて素敵だわ。同じようなことを言ってイラク戦争を支持し、実は自分が間違っていたというどこかの国の首相と大違いね。

玲奈 :1791年(フランス革命の2年後)、最初に死刑廃止が議論されるの。フランス革命と言えばギロチン、という汚名をはらそうという人たちがいたの。でもなかなか進まなかった。拷問を廃止した欧州最初の国、奴隷制を廃止した最初の数カ国なのにね。

麗子 :どうしてなのかしら

ばあや:不幸にして戦乱に巻き込まれたからでございましょう。バダンデールも戦争と死刑が結びつきの強いものといっております。また、死刑の真実がまだ十分に伝わっていなかったこともございましょう。

玲奈 :そうなの、そういう中でも死刑廃止は、フランス左派が求める変革、進歩のシンボルとしてあり続けるわ。一度たりともそのことを考えなかったことはないの。

麗子 :え、左派って、一定の思想が必要ということ?

ばあや:フランスでは「左派」というのは、進歩派とか変革派という意味合いが強くで、日本で言うと「リベラル」が近いように思います。フランスでリベラルというと、保守的な人々というほうが近いでしょう。

麗子 :そうなの。確かに、戦争と死刑が結びつくなら、戦争のない、平和で自由な社会は死刑廃止と結びつくわけだから、そういう人たちが目指す目標というのはわかる気がするわ。

玲奈 :そう、だからもっと広く政治家、思想家、ユーゴーやカミュのような作家たちもその思想的系譜を担ってきたのよ。

麗子 :広がりを持っているのね。私「ペスト」(アルベール=カミュ)の中の医者の言葉が忘れられないわ。不条理を見つめながら最後まで人間の力を信じる、そういうヒューマニズムに裏打ちされているのね。それにユーゴーはヨーロッパの共同体を訴えた人ね。そのヨーロッパの共同体が実現しつつあって、参加の条件の一つが死刑廃止国であること、というのは何だか象徴的だわ。

玲奈 :まあ、麗子さん、少し会わない間にずいぶんいろいろなことを考えるようになりましたわね。ばあやがいいからかしら。

ばあや:とんでもございません。お嬢様の天性のものでございましょう。それにいつも玲奈様の知的なコメントを読んで勉強しておられますし。

麗子 :でも玲奈さん、理念的なことはよくわかりましたけど、私たちが話していた、死刑に抑止力があるのか、被害者の感情の問題はどうなのか、という各論的な話はどうなのかしら。

玲奈 :そうね、その点も大事ね。そのことは明日お玉さんのお屋敷にお邪魔して、お話しませんこと?

麗子 :まあ、一度行きたかったの。お玉さんのお屋敷の日本庭園で越後屋おたまさんも交えて話したいわ。




 というわけで第2回は、麗子は玲奈とともにお玉さんのお屋敷にお邪魔します。
 第3回は、リレーを締めるプロが適当だと思っていますが、まだ決まっていません(私の心の中でしか)。
 その後、ロベール=バダンデールの演説全文和訳を公開する予定です。

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by luxemburg | 2006-09-17 18:53
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