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ジダン問題はあちこちでいろんな意見が出てきて、私にとっては興味深い。
1. 暴力は暴力、ヤジや悪口に対して暴力は許されない これはその通りで、私も暴力が正しいといっているわけではなく、暴力が正しかった、だからレッドカードを撤回せよ、フランスの勝ちにせよ、とは言ってるわけではない。 2. 挑発に乗っただけじゃん、要するにバカなんじゃん。 これも試合の結果から見てその通り。ただ別に私はフランスチームに何かを賭けていたわけでもないしフランスのサポーターだったわけでもないので、それをバカといい、許せないと考えるかはフランス国民とサポーターがどう言うかを尊重しようかなと思っている。もしフランス国民がジダンのメッセージの方が大事だと思えば要するにバカ、といえるかどうかは難しい。 4. ジダンがすごいプレーヤーだから許される、結局そう言うことじゃないの? そういう面はあるだろう。有名なプレーヤー、その他偉大な功績のある人がやるとそのメッセージ性は大きくなる。三島由紀夫でなければ年間何万人もいる自殺者の一人に過ぎないかもしれないし、ユル・ブリンナーでなければ肺ガンで死ぬ直前に「たばこをやめろ」と言っても誰も聞かないかもしれない。与えるインパクトの大きさは比べものにならないと思う。だからこそワールドカップの決勝であのスーパースターがとった、汚点を残すかもしれない行為の意味を考えることになる、彼もそれなりの犠牲を払っている、だから我々もそのメッセージを重いものとして受け取ることになる。 ◆ 常軌を逸した言動 イタリアの選手がなんと言ったか、事実がわからない以上、その言動がどう評価されるべきか、判断は簡単ではないし、事実がわかったとしても、文化にもスポーツにもよる。 日本に引き直して考えるのは難しいが、では「おまえのかあちゃんでべそ」でいきなり殴ったら判定ははっきりしている。 「おまえんところのチームは"えた"のチームだろう?」「"よつ"だろう」「"非人"だろう」もしくは、「精薄のチームのくせに」などの障害を表すような言葉、「おまえは妾の子」などと言ったやつをけがしない程度につき倒した、ならどうか。 そんな発言があった場合、とにかく暴力はいけない、ジダンが悪い、はいおしまい、ですませるだろうか。 「あんな部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と発言する政治家がそのまま首相候補の一人としてふんぞり返っている。 ◆ 暴力 弱者をおびえさせる暴力、相手に取り返しのつかない傷害を与える暴力もあれば、子供のけんかのような暴力、プロレスの反則、アイスホッケーの殴り合い、ビーンボールを二度とさせないためのピッチャーに対する暴力。 圧倒的な力で街ごと焼き尽くす、国際法に則った正々堂々と皆殺しをする暴力。不法で卑怯な市民を巻き添えにするテロという暴力。 すべての暴力は許されない・・・・すべての。 ただ、その暴力が許される、許されない、ということとそのメッセージを読み取るべき暴力があることとは別だ。今回の事件を「暴力は許されない」と葬り去り、そこにメッセージを読み取らない、その幕引きでいいのか。 9.11テロも許されない暴力である。ジダンと比べることなどできないような暴力である。そこからでもメッセージを読み取ることはできたはずだ。 言葉が軽すぎる。言ったことに対する責任をとらせる、そういう国であって欲しい、ジダンの事件を受けて私はそう思う。 追記。先日死刑問題に寄せて、犯罪が持つメッセージを解読するべきなんだ、ということを書いた。強盗事件の半数以上の背景にサラ金問題があるという。強盗は許されるとは誰も言わないし、強盗犯人が「新自由主義に警鐘を鳴らす目的で犯罪を行った」などともいわない。カネが欲しかったから短絡的にやったんだろうと思う。しかし、そこから読み取るべきメッセージがある。 えた、ひにんというのは江戸時代の士農工商の下に人間以下の階級としてつくられたもので嫌な仕事をさせられた。よつ、というのは四つ足の意味で人間ではない、ということ。明治以降「新平民」と言われて法律上差別がなくなったことになっているが、「地名総監事件」(どこが部落であるという地図を作成して企業に売っていた事件。広範囲に見られ、就職差別などに使われた)Oをはじめとして差別事件はその後も何度も起こっている。
by luxemburg
| 2006-07-15 22:31
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