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by luxemburg
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九条の会



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メッセージ解読能力----死刑問題と北朝鮮
 おびえた動物が牙を剥いている、凶暴に見えるがよく見ると体に何か刺さっている。それを抜いてやればなんのことはない、人間を信頼し、やがて友達になる・・・とまあ、どこかのアニメのような話だが、こういう物語の主人公は心優しいというより、凶暴に見える動物が発するメッセージを読み取ることができる。逆に、メッセージを読み取る力のある人間は優しさを持つことができる、ということなのかもしれない。「すべてを理解することはすべてを許すことである」。



 先日奈良県の少年が家に放火して母親と弟妹を焼死させた。なんの罪もない、子供を複数殺したとなれば16歳でも死刑にしろ、という声が聞こえてきてもおかしくないが、多くの人がこの子の置かれている状況から、この少年は一種のメッセージを発している、それを理解した。途端に「かわいそうだ」「この子こそ被害者だ」と減刑嘆願がなされるほどに風向きが変わった。もちろん私は死刑など認めないのでこれはすばらしいことだと思う。罪のない子供が殺されたことは本当に悲しいが、犯人を死刑にしても誰も生き返るわけではないからだ。お受験殺人なども、専業主婦のおかれている心の闇が理解できないのか、とむしろ非難する声すら聞かれた。
 このように多くの人がメッセージを理解する場合にはよいのだが、逆に何故こんなことをしたんだ、意味がわからない、こわい、となると実際にはその事件が一種のメッセージを発していたとしても当然黙殺されることになる。極端にいうと理解されるかされないかで死刑かどうかが決まるともいえる。
 犯罪だけではない、毎年3万人を超える自殺者は、それ自体強いメッセージを発している。しかし、子供や追いつめられた者は、的確にメッセージを発することができず、また発することのできるメッセージの種類も限定されてくる。殺人や自殺という形でしか発することのできなかったメッセージは本当に悲しいが、だからこそ受け取る側も真剣に理解しようと努力すべきだ。

 北朝鮮の経済は、7,8年前、どん底だといわれた。韓国がV字型回復(私はそう評価してないが)といわれた時期、北朝鮮は日本との関係改善によって支援を受けようと考えた。それがおそらく第三国で拉致被害者が発見されるというシナリオだっただろう。実際には、横田めぐみが帰ってくる最大のチャンスをぶちこわしたのは前の首相だ。わざとやったのかどうかはよくわからない。見ようによっては、拉致被害者を救う気なんて最初からなかった、この問題をこじれさせて政治利用しようと思っていたと言われても仕方のないことをやっておじゃんにしてしまった。
 続いて、北朝鮮が拉致を認めたのも、関係改善のメッセージだった。しかし、結局それを無視する形でこじらせてきた。相手方のメッセージを無視したり、ねじ曲げたり、遺骨鑑定のようにウソで塗り固めたり。最初の例で考えると、動物はいっそう警戒し、より追いつめられたと考える。それをこちらで銃を構え、むこうが暴走するのを待つ。いったい何のために、何を目的に外交をやっているのか。
 宮台真司さんがよく外交は戦略的コミュニケーションの能力のある者がやらないとダメ、というが、結局相手が発するメッセージを正確に受け取る能力が外交に必要だということだろう。その能力がないのか、それともアメリカが兵器を買わせるために意図的にねじ曲げよと指令しているのか。
 後者だとすれば日本の政治家はずいぶん追いつめられていることになる。北朝鮮の人々のおいつめられようも相当だろう。そして日本人の多くもまた追いつめられた気持ちになってヒステリックになっている。

 死刑が問題になりそうな犯罪だからこそメッセージを理解すべき、というのと同じで、外交でもまたこういうときこそ相手のメッセージを読み取る努力が必要だ。
 今北朝鮮が発しているメッセージはなんなのだろう。中国のまねをして、中国韓国の支援の下、ある程度開放政策と市場経済化を進めていきたい。市場化、自由化を進めると、国内は混乱するだろうが内政干渉しないで欲しい、ということかもしれない。だから、俺たちは猫をかむくらいの力はあるんだぞ、と誇示したい。イラクのように丸腰になったら、相手が弱いと見れば居丈高になる国が何をしてくるかわからない。保障が欲しい、金王朝の下でゆるやかに改革を進めるのを認めてもらいたい。
 それは、何かあれば一気に難民が流れてくる可能性のある韓国や中国にはよくわかるのだろう。別に金王朝が誰も大事だとは思っていないとしても、国土を破壊し尽くして放射能だらけにするような「民主化」よりはるかにマシだ。だから、それよりは金王朝のままソフトランディングして欲しい、地続きの我々が一切さわいでないのに海の向こうにいる国々が大声を上げるのはやめてもらいたい、こういうことかもしれない。

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by luxemburg | 2006-07-11 22:02
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